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なぜGMは、Chapter 11を申請しないのか
GMの再建計画提出の報道を見ていて考えていたのは、なぜGMは、Chapter 11を申請しないのか、申請を回避しようとしているのかという点です。

米GM債務再編交渉続く、過剰債務が最大のリスク(ロイター)

Chapter 11は、DIP型の再建手続で、経営陣はそのまま残ることができますし、事業も継続することができます。その上で、各クラスの債権者の多数決(債権者数の過半数、債券額の3分の2)により、(個々の債権者の同意がなくとも)債権カット、債務の株式化などの方策を取ることができ、現実に大手航空会社などもこの手続を利用してきました。

で、GMの再建計画(US TreasuryのWebページからダウンロード可能)に何か手がかりはないだろうかと思って見てみました。資料を入れて100ページを超えますので注意。ざっと目次をみて、Appendix LにBankruptcy Analysisというのがあるのを発見。

これを読むと、GMは倒産手続に入ることによる売上の減少、すなわち消費者が倒産手続中の会社からは車を買わなくなるということを倒産手続を回避する大きな理由として挙げているようです。でも、これってそのまま鵜呑みにできるのでしょうか。確かに会社が危機に瀕していることを多くの消費者が知らないような場合には、銀行や大口債権者との間で私的整理を進めた方が営業に対するインパクトが少なくなるというのはありますが、これだけ大々的に経営危機だと報道されて、アメリカ政府に支援を求めているGMなのですから、もうその報道だけでGMを買わないという人もいるのではないですか。倒産手続に入っても会社がなくなることはない、むしろケジメをつけて健全な財務体質の会社になって戻ってくるとのメッセージではダメなのでしょうかね。まあ、GMという会社が「倒産した」というのは一般のアメリカ人には大きなショックを与え、「Bankruptcy」という言葉が一人歩きする危険はもちろんあるでしょうし、航空券や消費材ではなく、自分の手元に残る高い買物をするということに心理的抵抗感があるというのは分かるのですけどね。

もう少し説明を読み進めて行くと、Chapter 11をPre-solicited、Cram-down、Traditionalの3つの運用方法に分けて、これを提案の私的整理案と比べていたり、GMのBSとCapital Structureについての分析と絡めて短期の交渉で削減できるのは、無担保社債とVEBA(任意従業員福利厚生基金)であり、その削減額には自ずと限界があること、その他の債務も削減するためにはより時間がかかるTraditionalなChapter 11によらないといけないが、それにより失われるものも多い、つまりスピードが重要ということが書かれています。

ちなみに、GMの2008年9月末時点での資産は1100億ドル、負債が1700億ドル。この負債のうち、商取引に関する負債が518億ドル、年金や福利厚生基金が464億ドル、通常の担保付及び無担保負債が452億ドル、その他が260億ドルとのことです。すごい数字ですよね。

次に書いてあるのが、GMのChapter 11申請がGMACのEvent of Defaultをトリガーするリスクです。GMACは、GMの金融関連会社で、GMはこの会社を通じて顧客に低金利のローンを提供して車を買ってもらうというビジネスモデルなわけですが、GMACはローン原資をさらに借り入れによってまかなっているので、この借り入れを返済しなければならなくなると、GMAC自体の資金繰りが行き詰まるだけでなく、顧客にも車を買える資金を融資できなくなるということで大きな問題が生ずるわけです。これを回避するためには、GMACにも資金提供しなければならなくなり、DIPファイナンスで必要な金額が遥かに大きくなるというのがGMの主張です。これは理解可能ですが、きちんと法的手続をとってバランスシートを整理すれば、追加のDIPファイナンスを政府から受けることも可能なのではないかという気もするのですけどね。

日本では金融債権と商取引債権を区別できないというのも私的整理を使う一つの理由として説明されることがありますが、Chapter 11はその辺は柔軟で、頭数が少なく金額の大きい無担保社債とVEBAを各クラスとして、そのクラスをターゲットに債務の削減をすることができるというのが当然の前提になっているようです。

以上が、GMの説明で、日本でも議論されている私的整理のメリットと言われる点をカバーはしているのですが、つっこみどころはそれなりにありそうですし、逆にデメリットとしてよく言われる点、すなわち債権放棄や債務の株式化の額が十分なのか、これだけの規模の再建計画なのだから他の債権者にも多少は痛みを分かち合ってもらうということは本当にあり得ないのか、といった点についても問題となるはずです。このご時世、売上の上昇に過度の期待はできず、売上目標を達成できない可能性もあるわけですから、やはりしっかり債務を整理しておくということが必要だと思うのです。

結局、当面の運転資金を確保するのにアメリカ政府に頼らなければならないということなのかもしれませんが、私的整理が失敗した上での破産法申請は逆に手遅れにもなりかねないので、アメリカ政府がどのように再建計画をレビューするのか要注目です。長々と述べてきた割にはいつもどおり歯切れの悪い結論ですが、再建計画に直接あたって勉強になりました。日本の倒産法実務とも重ねつつ、今後の動きを見守ろうと思います。
| Business & Law | 01:01 | comments(0) | trackbacks(0) |
メリルとリーマンの行く末
In Frantic Day, Wall Street Banks Teeter(New York Times)
Lehman Expected to File for Bankruptcy Protection (New York Times)

メリルが1株29ドルでバンカメに身売り、リーマンが破産申請へということですか。特に引受先が見つからなかった後者の破産申請は衝撃ですね。

破産申請をするのは、とりあえずは親会社リーマン・ブラザーズ・ホールディングス・インクだけのようですので、子会社については、親会社の資産として各業態ごとに売却か清算かということを個別に考えていくのでしょう。ただ、契約条項によっては親会社の破産申請が子会社に対するデフォルト条項をトリガーすることもあるでしょうし、子会社が第三者と締結したデリバティブ取引をそのまま親会社につないでいる場合もあると思うので、今後第三者による権利保全の動きが加速すると現在は健全な部門にもいろいろ影響は出てくるかもしれませんね。また、日本のリーマン・ブラザーズ証券は、現在は株式会社化された日本の法人になっていますが、今後の日本のオペレーションについて、アジア・パシフィック地域全体で売却を考えるのか、日本の中だけで何か動きがあるのかなどについても要注目ですね。

【追記】
なんてことを書いていたら、金融庁からリーマン・ブラザーズ証券株式会社に業務停止命令が出ました。
リーマン・ブラザーズ証券株式会社に対する行政処分について
リーマン・ブラザーズ証券株式会社に対する行政処分について(2)
資産保護の目的があるとはいえ、この11日間の業務停止命令は、健全(かもしれない)子会社に対しも契約解除などを誘因して影響を与えるかもしれませんね。

【再追記】
日本法人まで一気にここまで行ってしまうとは。上記のぼくの記述は読みが甘すぎましたね。
水面下ではいろいろと動きがあるようで、情報収集や今後あるかもしれないことに対する準備に追われた1日でした。
http://www.tdb.co.jp/tosan/syosai/2765.html
| Business & Law | 22:39 | comments(0) | trackbacks(0) |
公正取引委員会がBHPビリトンに報告命令?
9月3日にBHPビリトンーリオ・ティント関係でいくつか報道がありました。

公取委、BHPビリトンに報告命令へ リオ・ティント買収計画 (NIKKEI NET)
公取委:海外企業同士のM&A初審査−−英豪系資源大手(毎日jp)

調べてみると、大元のソースはどうやら公正取引委員会の事務総長の9月3日付定例会見のようですね。
この会見の中で、事務総長は公正取引委員会が7月下旬頃からBHPビリトンによるリオ・ティントの株式取得について、「一定の取引分野における競争の実質的制限という独占禁止法に違反する疑い」があるとして審査を開始した旨を述べています。事務総長は、さらにBHPビリトンに対して報告命令を出す準備をしていることについても言及しています。

現行の独占禁止法によると、合併、事業譲渡、会社分割については、一定の要件を充足した場合には30日の待機期間を伴う「事前」届出が必要となりますが(法15条、15条の2、16条)、株式取得については一定の要件を充足した場合に「事後」届出が要求されているに過ぎず、待機期間はありません(法10条。先の国会でこれを事前届出とする改正法案が提出され、期限切れのため次の臨時国会での継続審議を予定していたようですが、解散含みの政治情勢もあってどうなるか分かりません。)。もっとも、届出義務がない場合でも、独禁法違反の状況がある場合には、公正取引委員会は、対象会社(外国会社を含む。)に対して職権で審査を開始して報告命令などの処分を行うことができ、最終的には排除措置命令(株式の全部又は一部の処分その他これらの規定に違反する行為を排除するために必要な措置を命ずること)を発することができます(法45条、47条、17条の2、49条)。これは、届出義務と当局の審査権限の範囲が一致していることの多い諸外国の法制とは異なる点です。運用上はともかくとして、法制上は独禁法上の公正取引委員会の権限は非常に広いわけです。

とはいえ、公正取引委員会は、企業結合規制についてはこれまで30年以上正式審査の手法をとっていないようで、実務上は、企業が公正取引委員会に自発的な問題解消措置を提案して非公式なクリアランスをもらうという事前相談制度が活用されてきました。今回のBHPビリトンの件について、事務総長は定例会見の中でBHPビリトンが公正取引委員会の任意協力の要請に対して非協力的であり、そのため報告命令を出す方向性が出てきたことを認めています。

今回の公正取引委員会の行動は、長年使われてこなかった企業結合規制について正式審査の手続をとることにしたという点のほか、外国企業対外国企業の企業結合に強い関心を示したという点で非常に興味深いものです。BHPビリトンやリオ・ティントは日本国内にほとんど拠点をもっていないようですので、排除命令や罰則(確定した排除命令に対する違反は、個人に対しては2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金又は併科、法人に対しては3億円以下の罰金)(法90条3号、92条、95条2号。その他にも10条1項違反の罪、調査処分違反の罪などがあるがもう少し軽い。)を実際にどのように執行していくのか、本件のようなメガディールでは3億円の罰金では抑止力にならないのではないか、せっかく公正取引委員会が重い腰をあげても完全に無視されてしまうおそれはないのかなど、いろいろ課題はありそうですが、EUやオーストラリアの独禁法当局の動きだけでなく、わが国の公正取引委員会の動きからも目が離せなくなってきましたね(アメリカの司法省と連邦取引委員会は計画を承認済みです。)。

ディールそのものについての経緯は、経営コンサルタントのつれづれ日記でよくフォローされていますのでご紹介しておきます。
BHPがRioに買収提案、Rioは拒否 資源メジャーがスーパーメジャーに(2007年11月11日)
BHPビリトン、Rioティントへの敵対的TOBに踏み切るか?(2008年2月4日)
BHPビリトン、Rioティントに「First and Only Offer!」(2008年2月6日)
BHPビリトン VS Rio ティント その4 ステークホルダーの利益とは? 鉄鋼業界の再編なるか?(2008年3月14日)

| Business & Law | 18:00 | comments(1) | trackbacks(0) |
Yahoo!買収提案拒否の方向との報道
WSJが最初だったようですね。WSJは購読していないのですが、New York TimesやSan Jose Mercuryにも同様の記事が。
Yahoo Expected to Reject Microsoft’s Takeover Bid(New York Times)
Yahoo to reject Microsoft bid (San Jose Mercury)
San Jose Mercuryはシリコンバレーの地元紙だけに、今後本案件の推移とともに他の記事の行間を埋めるような記事が出てくるようにも思います。

日本の記事は後追いで特に目新しいものではないですが、
ヤフー買収提案拒否へ MS強硬手段か(MSN産経ニュース)

Yahoo!はその後プレスリリースは出していないようですが(2月10日正午(GMT)現在)、月曜日にアメリカ市場がオープンする前に発表があるのですかね。株価がどう動くのか(マーケットはどうみているのか)にも注目ですね。
| Business & Law | 12:22 | comments(0) | trackbacks(0) |
サッポロHD特別委員会の意見書(うーん)
「スティール買収で企業価値棄損」サッポロ特別委(MSN産経ニュース)

ということだそうですので、プレスリリースに含まれる意見書要旨を読んでみたんですけど、どうも何といったらよいか、この特別委員会の意見書は本当に取締役会の判断の役に立つのでしょうか、というのが率直な感想(まあ、要旨なので公開されていないすごい全文があるのかもしれませんけど、通常要旨にエッセンスはつまっているはず。)。

サッポロHDの大規模買付行為の対応方針によると、大規模買付行為(特定株主グループの議決権割合を20%以上とすることを目的とし、あるいはその結果となる買付行為)があった場合には、サッポロHDとして大規模買付者に情報提供を求め、必要な情報提供を受けた後に取締役会による評価期間(60日-90日)に入ることとなっています。そして、この評価にあたっては、(1)大規模買付者が大規模買付ルールを守った場合には、原則として対抗措置は取らないが、例外的に「当該大規模買付が明らかに濫用目的によるものと認められ、その結果として会社に回復し難い損害をもたらすなど、[サッポロHD]株主全体の利益を著しく損なうと判断される場合」には適切と考えられる方策をとることがあり、(2)大規模買付者が大規模買付ルールを遵守しなかった場合には、対抗措置をとることがある、という対応方針が定められています。

今回のスティールパートナーズの買収提案については、2007年12月6日から評価期間に入っているようです(スティール側がサッポロHDから2007年5月末に要請のあった追加情報を2007年11月まで提出しなかったという事情があるにせよ、2007年2月15日にあった買収提案(一応現時点で変更はないかどうか確認していますが)を今検討しているというのは、事前警告型で想定されていることとはいえ随分とゆっくりな気がしますね。)。そして、本年1月8日に以下の内容が特別委員会に諮問されています。
1. SPJSFが、本買付提案に記載された買付行為を行う場合、当該買付行為は、明らかに濫用目的によるものであり、その結果として当社株主全体の利益を著しく損なうものであるかどうかについて、調査・検討及び評価すること
2. SPJSFによる本買付提案の内容が、当社株主全体の利益に資する適切なものと認められるかどうかについて、調査・検討及び評価すること

この諮問に対する回答が本日の意見書というわけです。
これによると、スティールの買収提案は、サッポロHDの企業価値を毀損し、株主の共同の利益を著しく害するおそれが大きいとの結論が導かれています。

その理由の一つの柱は、スティールが経営支配権取得後の経営方針、経営チームに関する情報、投下資本の回収方針、スティール・グループに関する情報等、企業価値を左右すると考えられる重要な情報を提供していないから、企業価値が毀損されるおそれがあるというもの。これって、そうなんですかね。まあ、スティールの提案自体確かに抽象的でよくわからないし、矛盾もあるようにみえるのはそうなのですが、企業価値が毀損するという結論は情報が提供されていないことから、そんなに簡単に導けちゃうもんなのでしょうか。少なくとも、スティールによる買収提案価格に触れてそれを簡単にでも分析をする必要はないのでしょうか(一般論として情報は全く出さないけど、すごいプレミアムで買収しますという場合はどうなんでしょうか。もちろん、この場合は他のステークホルダーの利益の問題も出てくるかもしれませんけど。)。また、スティールがサッポロHDの保有する土地を売却して投下資本を回収して企業価値を毀損する価値が高いとありますけど、数字も示さないでそう言っちゃうのは少し乱暴ではないんでしょうか。遊休土地なら売ってもいいと思いますし、そもそも手持ちの土地を売るだけで投下資本を回収できるんでしょうか(あと、税金もあるでしょうし。)。まあ、かくいうぼくも数字は見ていないのですけど。

意見書が企業価値を毀損するもう一つの理由として挙げているのが、買付提案が66.6%の取得を目的としているにも関わらず、取得後の少数株主の取り扱いについて具体的に明らかにしていないという点。そもそも提案が66.6%なのは、近時の改正によりTOBにおける全部買付義務が部分的に導入された際に、TOB成立後の保有割合が3分の2以下となる場合が例外とされたことが背景にあると思われます(金商法27条の13第4項及び同施行令14条の2の2。逆に3分の2超となると全部買付義務を課される)。まあ、いうなれば法律で認められたギリギリのラインなわけです。確かに、将来における二段階買収による強圧的買収が起こるリスクはないわけではないですけど、66.6%の買収だからといって直ちに強圧的二段階買収に該当し、企業価値を毀損するといえるのか【2月5日追記:意見書は強圧的二段階買収に該当する「可能性が高い」としていますが、その直前で「このような公開買付けは正当な目的のものとはいい難い」ともしています。】。このあたりはブルドックソース事件の法的検討〔下〕(商事法務1810号15ページ)において田中亘先生も触れられています。
・・・そもそも強圧性の問題に対しては、公開買付規制の改正によって対処するのが本筋であり、これに対処するために買収防衛策を認めよという主張は、もともと筋のよくない主張である。なぜなら、強圧的な公開買付けは、何も敵対的買収に限らず、たとえば支配株主あるいは経営陣の行う非公開化取引においても起こりうるからである。・・・

まあこの直後に田中先生も述べているようにリスクがあるから防衛策を認めるべきという反論もあるんですけど、脅威の程度についてプラスαが必要なんじゃないかなという気がするんですよね。
【2月5日追記:スティール側は、一応Squeeze Outの意図はない旨回答しているんですよね。この信用性についてはいろいろ議論があるかもしれませんけど、それ以上の回答を求めるとなると「不利でない条件で全部買付しろ」と言っているのと同じような気がするんです。66.6%というのはギリギリ特別決議が通らないレベル。金商法もそのあたりを考えて3分の2以下の場合には全部買付義務を課さなかったわけです。また、意見書は上場廃止による売却機会の喪失も強圧性に寄与するように書いていますが、東証では昨年11月に「少数特定者持ち株比率」に代えて「流通株式比率」を新たに導入して、流通株式比率5%未満を上場廃止基準としているところ、10%以上の株主がスティールのみという現在のサッポロHDの株主構成において、66.6%の取得でこの基準に該当する可能性が高いと本当に判断したんだろうかという疑問もあります(仮に66.6%超のTOBなら全部買付義務がトリガーされる。)。逆に、「二段階買収をする際には最初のTOBと同じ条件にする」と言ってもらったら安心する・・・というわけでもないと思うので、やっぱり特別委員会が懸念しているのは後述したようにスティールの属性に対する不安なんではないですかね。ごちゃごちゃと追記してきましたが、考えてみると、実際にTOBがローンチされない限りは実際の買収条件というのは決まらないわけで(スティールは全く別の条件でTOBをかけることも考えられないわけではない)、この段階で強圧性うんぬんを議論する意味ってあるのかなあなんて・・・そんなこと言っちゃったら身も蓋もないか。でも、これって事前警告型買収防衛策に内在する問題なのでは・・・とちょっと自分でもよく分からなくなってきたところで追記終わり。】

あと、意見書は、「ブルドックソース事件最高裁決定は、SPJSFの公開買付けによる経営支配権の取得が、会社の企業価値を毀損し、株主の共同の利益を害することになるとした株主総会の判断を、「経営権支配権取得後の経営方針を明示せず、投下資本の回収方針についても明らかにしなかったことなど」を理由として、その正当性を認めた。」としていますが、この部分に関して最高裁の判断枠組みは、(1)企業価値の毀損及び株主の共同の利益が害されるか否かについては最終的に株主自身により判断されるべきものであり、(2)株主総会に判断の正当性を失わせるような重大な瑕疵が存在しない限り当該判断が尊重されるべきというものであり、(2)の部分について
[株主総会の]判断は、[スティール関係者]において、発行済株式のすべてを取得することを目的としているにもかかわらず、相手方の経営を行う予定はないとして経営支配権取得後の経営方針を明示せず、投下資本の回収方針についても明らかにしなかったことなどによるものであることがうかがわれるのであるから、当該判断にその正当性を失わせるような重大な瑕疵は認められない。
(最決平成19年8月7日より)

と言っているに過ぎないのですよね。経営方針等を示さない=企業価値を毀損するというのではなく、経営方針を示さないことを理由に企業価値を毀損するとした株主総会の判断=株主がそう判断したことも了解可能といったこの2つのニュアンスは随分違うように思うわけです。

こうして見てくると、意見書は直接は買収者の属性に触れずにアプローチをしているものの、どうも結論を導き出す理由に説得力はないように思います。むしろ直接は言っていないものの、スティールによる買収=企業価値を毀損という判断がまず先にあるような気もしてしまうのですよね。特別委員会の人が次のようなことを言うのもちょっと余計なことのように思いますしね。そもそも正当性は特別委員会の判断事項ではないし、意見書があれば正当性ありなのかとも思いますしね。
武藤氏は、特別委員会が「企業価値を大きくき損する」と判断したことで、買収防衛策発動に関しては「正当性という点では整った。買い付け行為があった場合には、発動することの正当性はある」と述べた。サッポロHDの場合、すでに買収防衛策発動導入で株主総会の判断を経ているため、必ずしも株主総会の判断は必要なく、取締役会の判断で足りるとの認識を示した。
【追記2月5日:山口先生のエントリーをみて、以下の一文にも引用範囲を広げました。確かにこちらも引用したほうが全体の趣旨が分かるように思います。】
また、買収防衛策の内容が公平性などに照らして妥当かどうかは「相当性の判断になる」とし、具体的に発動された防衛策についての判断になるとした。
正当性の点では、買収防衛策発動の条件整う=サッポロHD特別委(ロイター)

ただ、買収主体が誰であるか、どういう実績を持ってきた人々かというのは確かに重要な要素だと思うんです。だから、本意見書は「濫用目的」について認定しない理由を縷々述べて大規模買付ルールの解釈論を展開するよりも、むしろ濫用的な面があるかどうかについて、最終的な結論は出せなくても【2月5日追記:大量買付者の属性を含めその買付提案が濫用的なものであるか】正面から分析したほうがよかったのではないかと思ってしまいます。確かに濫用目的かどうかは認定が難しいですし、防衛策発動を正当化するために必ずしも必要でないというのは意見書要旨にあるとおりかもしれませんけど、「濫用目的」というのは、現行のサッポロHDの大規模買付ルールにも入っているわけですし、諮問事項として明確に書かれているのですからね。ブルドックソース高裁決定のように裁判所が軽々に濫用的買収者を認定するというのには反対ですが、特別委員会が買収者の属性についても分析して一定の意見を出したということであれば、仮に将来取締役会の決定の正当性が問題となった場合に(裁判所がそういう判断枠組みを取るのかどうかもまだ分かりませんが)、その正当性判断の基礎にはなってくるのではとも思うのです。そして、特別委員会に期待されているのは本来そういった論点・議論を出すということだと思うのです。

防衛策の内容についてもいろいろと理論的な研究も進んできている中で、買収提案について取締役会の諮問を受ける特別委員会の意見の注目度というのも高まってきており、そのような中で会社のために中立公正な意見をとりまとめるのは大変なご苦労だと思います。ただ、今回はちょっと拍子抜けしたというのが正直なところでした。今後は、ぜひ、敵対的買収のシーンでもカブドットコム証券の意見表明のようなガチンコの意見書が出てきてほしいものです。

(事前警告型で情報開示を促したのであれば、相手方が情報を開示していないことの指摘も含めて今度は会社側が改めて経営プランを提示し、防衛策を発動せずにTOBの結果に委ねるということでもいいのになあ・・・。)

【2月5日追記:いつものことですが、あとから他のブログ等もふまえて読み返すと、いろいろと考えたつもりで書いていても、雑であったり、言い過ぎだったり、逆に言いたいことを十分に言えなかったり、でも実際に書いてみて分かることもあるし、疑問のままに終ることもあるし、また自分の今の理解不足を露呈してしまったりするもので、このエントリーはそんなレベルと思って笑読していただければ。】

| Business & Law | 23:40 | comments(1) | trackbacks(0) |
MS、Yahoo!に買収提案
ちょっとこれから出掛けるのですが、どうも敵対的買収も視野に入れた提案のようで、その経緯も含めてこれからしばらくは注目ですね。
マイクロソフト、ヤフーに買収提案446億ドル (MSN産経ニュース)


【追記】
いくつかの記事とプレスリリースのクリッピング
MS敵対買収に発展か ヤフー側には毒薬条項あり(MSN産経ニュース)
Yahoo Has Poison Pill Defense At Disposal(javno.com)
Microsoftのプレスリリース(2008年2月1日)[Yahoo!への買収提案]
Yahoo!のプレスリリース(2008年2月1日)[買収提案への反応]

Yahoo!のプレスリリース(2001年3月1日)
[ライツプランの採用]
Yahoo!のSEC Filing(2001年3月19日)[ライツプランの採用]
Yahoo!の主要株主(Yahoo! Finance)
| Business & Law | 17:30 | comments(0) | trackbacks(0) |
イギリスの新株発行の実務の動向(推測を含む)
【2006年イギリス会社法の新株引受権の部分は、原則として2009年10月1日からの施行となっており、現在はまだ1985年イギリス会社法の該当部分が適用されておりますが、本記事では、特に断りのない限り、2006年イギリス会社法に基づいた記載としました。】

以前のエントリーでは、イギリスにおける株主の新株引受権について、主にイギリス会社法及び関連法規の規定ぶりという点からみてみました。
イギリスにおける株主の新株引受権(1)
イギリスにおける株主の新株引受権(2)

今回は、もう一歩踏み込んで、イギリスでの新株発行の実務の動向がどうなっているのかについて分かる範囲で調べてみました。以下では、主に上場会社の上場後の資金調達を念頭におきます。

資金調達方法のメニューとしては、大まかに以下のものが考えられます。

株主割当に相当する方法
Rights Issue: 株主割当の一形態。株主は、新株引受権を転売することで当該権利の価値を実現することができる。仮に、新株に応募をしなくても、新株引受権は株主のために転売される(失権しない)。ディスカウントは15%−20%が通常だったようだが、近時は40%のディスカウントなどの例もあるよう。

Open Offer: 株主割当の一形態。形式上は引受人が全発行株式を引き受けた上で、既存株主に申込みを勧誘する。Rights Issueとの違って、株主が応募をしなければ株主の引受権は失権し、引受人が引き受ける。なおOpen offer及び後述するPlacing、Vendor PlacingやOffer for Subscriptionは、FSAの承認がない限り10%以上ディスカウントできない(Listing Rules 9.5.10)

これらの方法は、株主割当に相当するので、授権枠に残りがあり、法551条(旧法80条)の権限の範囲内であれば、原則として株主の新株引受権の適用除外(Disapplication)をする必要がありません(注1)。

もっとも、外国人株主がいる場合(とりわけ問題になるのは多数の株主、個人株主がいる場合)には、募集関係書類を当該外国に送付するのは当該外国の証券取引規制上問題があることがある(特に米国、日本など)ため、適用除外(Disapplication)の手続(特別決議)を行った上で、Investment Bankに仮に割り当てた新株引受権を転売して利益を外国人株主に帰属させるという方法が取られることも多いようです(注2)。これは上場会社について株主割当を法律上の原則とすることの弱点かもしれませんね。

この点、外国人で英国内に連絡先住所(日本でいえば常任代理人)を有しないものに対しては、London Gazzeteへの公告で足りるとされているので、これを利用すれば募集関係書類を当該外国に送付しなくてもよいようですが、英国内に連絡先住所(常任代理人)を有するものについて英国内の連絡先住所に募集関係書類を送付した場合はどうなんでしょう?代理人は英国内にいるわけですが、代理人としてはおそらく契約上それを伝達する義務があるわけで、困ったことにならないのですかね(注3)。

第三者割当に相当する方法
Placing: これはいわゆる第三者割当で、機関投資家を割当先とすることが多い。実務上、多くの会社は、毎年発行済株式の約5%については新株引受権の適用除外(Disapplication)を行っていることが多いので(この理由については、以前のエントリーのPre-emption Groupについての説明を参照。)、これを超える場合に特別決議を経ることとなる。

Vendor Placing: 買主が対象会社の株式取得の対価として新株を発行し、結果として株式交換のような形となる。買主から見ると、非金銭である対象会社の株式を対価として新株を発行しているので、新株引受権の例外となり、新株引受権の適用除外(Disapplication)は不要。第三者である売主に株式を発行するという点で、一応第三者割当に分類した。

Cash Box Structure: 現金のみを資産とするSPVをJersey島などに設立し、当該SPVの株式と引き換えに新株を発行するもの(SPVはすぐに清算されて現金が取り出される。)。これも非金銭であるSPVの株式を対価として新株を発行しているので、新株引受権の例外となり、Disapplicationは不要。これも第三者であるSPVの設立者(Investment Bankなど)を割当先とするという点で、一応第三者割当といえよう。

公募に分類されるもの
Public Offering (Offer for Subscription): いわゆる公募。いろいろと資料を調べたのだが、IPO時以外の公募の実務について記述されたものはほとんど見つからなかった。但し、後述するように、公募も用いられていることは確か。金銭を対価とする限りは株主の新株引受権のDisapplicationが必要。

イギリスにおける新株発行の実務の動向
ロンドン証券取引所の2007年のデータを入手しました(生データはこちら。Table 3をご覧下さい。)。


これによると、Main Marketに上場済みの上場会社の増資方法は、Public Offer(公募増資)が147件、Placing(第三者割当)が98件(但しVendor PlacingやCash Box Structureがこれに含まれるかは不明)、両者の組み合わせが17件、そしてRights Issueが7件(Open Offerが含まれるかは不明。)、従業員のインセンティブ・オプションが265件。これによると、公募増資が中心という大杉先生のご理解は正しいようですが、金額ベースでいくと、第三者割当が6,758百万ポンドで、公募の1、179百万ポンドを大きく引き離す展開。理由はこれだけではよく分かりませんが、特に株主のDiversityを高めたいなどの理由がなければ、大口の資金を集める際には機関投資家に第三者割当が便利でコストも安いし、新株引受権をDisapplyする際の株主の承認も取りやすいということもあるのでしょうか。なお東証のデータを見ると、日本では件数も金額も第三者割当が公募を上回っていてこれは予想通りなのですが(とりわけ新規公開時を除けば歴然)、じゃあイギリスで少なくとも件数ベースではかなり公募が使われる理由(日本との違い)はどこにあるのだろうというのが次の疑問です。このあたりは周囲の人にもおいおい聞いてみようと思います。

(注1)但し、Class 1取引に該当する場合、関係者間取引(法190条)の場合には、株主の承認が必要。
(注2)Disapplicationを行うことによって、割当によって生じる一株に満たない株式を集めて市場で転売し、その利益を株主に帰属させるということも行われます。また、若干の日程短縮も可能となるようです。なお、例えば発行済の転換権付社債に新株引受権がある場合には、当該転換権付社債はOrdinary Sharesではないため、法と社債要項の両方を遵守するためには、Disapplicationを行わなければならなくなります。
(注3)話が大きくそれますが、似たような問題は実は日本にもあるように思います。新株予約権の無償割当が防衛策の一環としても利用される例が多いのは皆様ご案内のとおりですが、この新株予約権の無償割当は、金融庁の企業内容等開示ガイドラインの2−3で「会社法第277条の規定による新株予約権無償割当てについては、新株予約権の取得勧誘に該当することに留意する。」とされており、効力発生日(割当日)までに目論見書を交付する必要があります。外国人株主の場合は、通常は定款で常任代理人の指定が義務付けられているので、常任代理人に目論見書を交付することになると思いますが、常任代理人はこの目論見書をどうするのでしょうか。米国については、証取法2条(a)項(3)号で新株引受権を無償で既存株主に付与する行為は証券の募集にあたるが登録を要しないとされているので、アメリカ人株主が常任代理人からこの目論見書の送付を受けても問題ないということなのでしょうかね。何だかちょっと気持ち悪いところではあります。金商法で組織再編成に伴う有価証券の交付が募集又は売出しに該当することになったこともあり、「外国人株主」をどう扱うかという点は、従前議論されてきた議決権行使の場面だけでなく、株主への有価証券交付というところを意識すべき場面が増えたように思います。外国人株主と日本の株式会社との関係については、5%ルールを含めた実質株主の把握、カストディアン業務、株券ペーパレス化に伴う諸問題とも絡めてフォローしていきたい分野でもあります。
| Business & Law | 19:00 | comments(1) | trackbacks(0) |
偽の大量保有報告書
ちょっと気になったので、クリップを。
各メディアからいろいろと記事が出ていますが、MSN産経ニュースの記事を。
大量保有報告書は、発行会社に報告義務があるわけではなく、株式を一定量し取得した人が自ら報告することになるので、虚偽報告について刑事罰があるとはいえ、確かにこうした虚偽報告をどうチェックするかは問題あるんですよね。すべて確実に裏をとるまで報告書を受理しないというのも現実的ではないし、どうしたもんですかね。

ちなみに最近MSN産経ニュースは結構評価しています。理由は記者会見の一問一答、公判の尋問過程など長めの記事を載せてくれるから。新聞や雑誌など紙面の制約がある場合には、短くまとめなければならないのは分かりますが、ネットでは全文掲載をして評価は読者に任せることもできるわけです。長い記事についてはエグゼクティブサマリーとかがあってもよいのですが、「生に近い」取材結果に触れられるというのは、その内容を真剣に検証しようというときには非常に役立ちます(もちろん、これだけで足りないということもありますけど。)。ぼくは、ニュースメディアの役割というのは、まずは事実をきちんと伝えることだと思っているので(意見を述べるのはそれに付随するもの)、こうした方向性があることは、非常によいことだと思っています。
| Business & Law | 06:50 | comments(0) | trackbacks(0) |
イギリスにおける株主の新株引受権(2)
【2006年イギリス会社法の新株引受権の部分は、原則として2009年10月1日からの施行となっており、現在はまだ1985年イギリス会社法の該当部分が適用されておりますが、本記事では、特に断りのない限り、2006年イギリス会社法に基づいた記載としました。】

前回に引き続き、今回は新株引受権の適用排除について説明します。

新株引受権の適用排除(Disapplication)
この新株引受権は、Private Companyであれば定款変更によって完全に排除することができます(法567条)。

また、Private CompanyでないPublic Companyの場合であっても、法551条によって一般的に株式の発行、新株予約権の付与などの権限を与えられている場合(generally authorised for the purpose of section 551)には、定款の定め又は特別決議によって、取締役に新株予約権を排除したり、修正したりする権限を与えることができます(法570条)。法551条の権限は、割当可能株式数の上限を示す必要があり(但し、上限は会社法上では決まっていない)、5年以内でなければならないので、新株引受権の排除もそれに従うこととなります。

さらに、会社は、法551条によって株式の発行、新株予約権の付与などの権限を与えられている場合(一般的か否かに限らず)、特別決議によって、取締役に特定の割当てについて新株予約権を排除したり、修正したりする権限を与えることができます(法571条)。

このようにイギリス会社法上は、新株引受権の適用排除に上限はないのですが、Pre-emption GroupというAssociation of British Insurers (ABI)、National Association of Pension Funds (NAPF)及び他の投資家からなる委員会が上場会社について、定期的・恒常的な新株引受権の適用排除については、毎年発行済み株式の5%の適用排除(3年間で7.5%の適用排除)のみを認めるというガイドラインを発表しています。このガイドラインには強制力はないようなのですが、上場会社は概ねこのガイドラインに従って、定時株主総会で発行済み株式の5%について新株引受権の適用排除を行うのが通例のようです。

なお、面白いのは、2006年会社法が授権株式の枠組みを撤廃したことです。(1985年会社法の2(5)条(a)の削除)(注1)。割当自由の原則をとる日本では授権枠が一応の外枠となっていますが、イギリスでは新株引受権の制約があるので、その外側にさらに授権枠を設ける必要はないということなんでしょうかね。

Listing Rules及びその他の規制
新株引受権の適用排除に関する同様のルールは、Listing Rulesにもあります(LR9.3.11RとLR9.3.12R)。加えて、Listing Rules 10は、上場会社による取引をClass 3(5%未満)、Class 2(5%以上25%未満)、Class 1(25%以上)、Reverse Takeover(上場会社自身による自己より大きい会社の買収その他上場会社の業務や資本構成を根本的に変更する取引)の四類型に分け、総資産、利益、取引価格、総資本の各数値を用いて計算される取引の規模によって分類される類型に応じて必要な手続を定めています。例えば、Class 1に分類されると、情報開示に加えて当該取引についての株主の承認を要求されます。仮にPre-emption Groupのガイドラインに反して一般的な新株引受権の適用排除を定めていたとしても、これによって極端な第三者割当には一応のチェック機能が働くとはいえそうです。(注2)

なお、イギリスでは、上場規則制定権を有するUK Listing AuthorityとしてのFSAと実際に上場管理を行うLondon Stock Exchangeが分かれているので、新株発行時には、FSAからAdmission to official list、LSEからAdmission to tradingを取得することとなります。上場会社が既に発行しているのと同種の新株を発行する時にもAdmissionが必要となりますが、どれだけの実質的審査がされるのでしょうかね(東証の場合も建前は上場申請書を出しますが、有価証券上場規定第302条によって原則として承認するものとされています。)。

(注1) 但し、既存の会社については、現行の発行可能株式総数が上限として機能します。
(注2) なお、企業買収時における取締役の中立義務(City Code: General Principle 3, Restriction on frustrating action (City Code Rule 21.1) )も、第三者割当の制約の一つと考えられますが、これについては別途時間があれば掘り下げたいと思っています。

参考文献:
Department for Business Enterprise & Regulatory Reform (通称BERR)のページ。2006年イギリス会社法の条文などを入手できます。
FSAのページ内の"Full Handbook-Listing, Prospectus and Disclosure"。上場規則、目論見書規則、開示規則の全文が各条文ごとに階層化されていて見やすいです。
www.practicallaw.com内の各種文献。購読が必要ですが、実務的な取り扱い、改正法についてのフォローなど、条文だけ見ていても分からない点が多くフォローされています。
河村賢治「英国上場規則における公開会社法―特に取締役・取締役会に関して―」(早稲田法学76巻4号(2001年))。Web上で発見。少し古いですが、イギリスの上場規制の枠組みを理解するには役立ちます。細かい規則の改正については、最新のルールをフォローする必要がありそうです。
| Business & Law | 21:27 | comments(1) | trackbacks(0) |
イギリスにおける株主の新株引受権 (1)
【2006年イギリス会社法の新株引受権の部分は、原則として2009年10月1日からの施行となっており、現在はまだ1985年イギリス会社法の該当部分が適用されておりますが、本記事では、特に断りのない限り、2006年イギリス会社法に基づいた記載としました。】

昨秋、事務所に入って間もない弁護士たちと一緒にイギリス会社法についての実務的なトレーニング(研修)を受けた際に印象に残ったのが、イギリス会社法における新株引受権の存在です。最近、おおすぎBlogで、東証によって検討されている(らしい)第三者割当の規制について触れられた際に、イギリスにおける第三者割当についても、ちょこっと触れられていましたので、これを機にぼくの分かる範囲で調査した結果を備忘録も兼ねて記録しておくことにします。もとより、研修や仕事を通して接した内容に仕事の合間をみてちょこちょこと調べた知識を足しただけのものですので、誤解や間違いなどありましたらご指摘いただければ幸いです。

新株引受権
イギリス会社法の下では、Equity Securitiesを発行する際にはOrdinary Sharesの株主に原則として新株引受権(Pre-emption right)があります。ここで、Equity Securitiesは、"ordinary shares in the company; or rights to subscribe for, or to convert securities into, ordinary shares in the company”と、ordinary sharesは、"shares other than shares that as respects dividends and capital carry a right to participate only up to a specified amount in a distribution”と定義されており(法560条)、定義の仕方が1985年会社法から変更されたものの、Equity Securitiesが配当及び残余財産請求権に制限のない株式及び当該株式の引受権又は転換権を持つ権利であるという枠組みは維持されています(注1)。

例えば普通株式に転換可能な新株予約権付社債の発行については、普通株式の株主に新株引受権がありますが、配当や残余財産請求権に優先権があっても制限がある優先株式の株主は、新株引受権を有していません。この点は、新旧会社法の下で変わりはありません(1985年会社法第89条、2006年会社法第561条)。

新株引受権の例外(Exception)
重大な例外は、新株引受権が全額金銭を対価として払い込む場合のみに適用があり、一部でも非金銭を対価として払い込む場合には適用がないことです(注2)。このため、イギリスではVendor PlacingやCash Box Structureという実務が定着しています。Vendor Placingは、買主が対象会社の株式取得の対価として新株を発行し、結果として株式交換のような形となります。買主から見ると、非金銭である対象会社の株式を対価として新株を発行しているので、新株引受権の例外となります。Cash Box Structureは、現金のみを資産とするSPVをJersey島などに設立し、当該SPVの株式と引き換えに新株を発行するものです(SPVはすぐに清算されて現金が取り出されます。)。これも非金銭であるSPVの株式を対価として新株を発行しているので、新株引受権の例外となります。このような発行が、会社法の潜脱行為ではないかという議論も一部にはあるようですが、実務上の必要性から容認されているようです。但し、その運用は抑制的になされているように思います。

次回は、これを前提に、新株引受権の適用排除(Disapplication)について説明したいと思います。

(注1) 1985年会社法は、Employee Share Schemeに基づき取得した株式をEquity Securitiesの定義から除いているが、2006年会社法はこれを定義からは除かず、法566条で新株引受権の適用外としている。
(注2)  Employee Share Schemeに基づく割り当て、Subscriber Shares、Bonus Sharesなども例外であるが、細かくは論じない。
| Business & Law | 09:00 | comments(0) | trackbacks(0) |
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